病院の外に出られない子どもたちや患者さんの代わりに、 自分の作品が旅をするのはどうだろう?
願いをこめて作っ た Happy Doll たちが、自分の夢を乗せて各地の病院を訪 ね、たくさんの仲間を増やし、1 年後に様々なストーリー を抱えて帰ってくる。Happy Doll の旅に関わった人たち の心がつながり、病院がつながり、
病と向き合う人々の緩 やかなネットワークができたら、病院はもっと風通しのよい、温かな場所になるのではないだろうか・・・。
ホスピ タルアート活動に訪れた病院で、窓の外をぼんやり眺める 患児の沈んだ横顔を見ながら、そんなことを考えていた。
それから、構想と準備に 1 年を費やし、2006 年にスター トさせた Happy Doll Project。当時は 13 病院を巡り 14 回のプログラムと 14 回の院内展 覧会、そして最後に総合展覧会を病院の外で開催して1年 間で終結するプロジェクトとして企画していた。しかし、 活動が進むにつれて 1 年ではとても止められない状況に なってきた。
「生きる力をもらった。」「気持ちをリレーできるってすば らしい!」「今度はいつ来てくれるの?」・・・
そんなあり がたい声を各所で頂き、期待にもっと応えたいと思ったか らだ。
かくして 1 年が終了し、作品を返送する時になって突然 思いついた。
そうだ!自分たちの Happy Doll がどこを旅 して、どんな人々と出会い、
どんな風に Happy Doll 仲間 が増えていったのか?病院で作品の帰りを待つ制作者たちに全貌を報告できる本を作ろう! そうして終結することができなかったこのプロジェクト は、毎年全国の病院を巡り続け、プログラムを実施し、そ こで展覧会を行い、次の病院にリレーし、1 年の終わりに は猛スピードで記録本を制作し、クリスマスシーズンには 作品返却とともにこの本を贈り続けることとなった。
2010 年には NY へ飛び、子ども病院や小児癌の子どもた ちと日本の病院をつなぎ、病と向き合う人々のネットワー クは国境を越えた。その年のクリスマスシーズンには、全 国と NY の病院で生まれた Happy Doll たちが、銀座和光 のショーウィンドウを誇らしげに飾った。いつもは病室で静かに闘う患者さんや、先立った友人たち の作品が、「わたし、ここにいるよー!」と華やかに表舞 台に登場し、街往く人々と心通わす光景に、私は心から感 動した。
5 年目の 2011 年は東日本大震災が起こった。凄惨な現場 に佇み涙し、少しでも被災者の心が落ち着くことを願い、避難所で Happy Doll Project を始めた。以降、刻々と変わ る現地状況から仮設住宅や復興公営住宅へと活動場所を移 行しつつ東北 3 県を巡ること 4 年半。心の応援とコミュ ニティ再生の一役を担う活動として今や定着し、現地で親 しまれている。 昨年は再び国境を越え、震災で頓挫していた南アフリカへ 渡った。2 つの子ども病院と 2 つの児童施設を訪れ、エイ ズや貧困、性的虐待や家庭内暴力が深刻な、厳しい環境で 生きる子どもたちとの Happy Doll Project。作ることに飢 えていた子どもたちは、まるで乾いた大地に水が吸い込む ように表現をむさぼり、圧倒的なパワーで作り続けたので ある。
そして今年、Happy Doll Project は 10 年目を迎えた。全 国や世界の病院あちらこちらを旅して出会い、作って、泣 いて、笑って、感動して・・・。振り返れば慌しい障害物 競走のようでありながら、一期一会の貴重な出会いと感動 の積み重ねであり、夢のようにあっという間の 10 年であっ た。
そして、命の現場のこころをつなぎながら、Happy Doll の旅はこれからも続くことだろう。
Happy
Doll
Project
2015
How about having their Happy Doll travel to places where children and patients cannot get out of the hospital?
Happy Dolls, which were made with their wish inside, visit other hospitals, make many friends, and come back after one year together with various stories.
Hearts of people who made Happy Dolls get connected, hospitals get connected and make a network of those who fight disease… if this comes true, wouldn’t hospitals be more comfortable and warmer places?
At one hospital which we visited as a part of Hospital Art, I found a child who was looking out of the window. Looking at his sad face, I was thinking of such a thing.
Since then, I spent a year further developing the plan and making preparations, and I started the project “Happy Doll” in 2006.
At that time, I was planning to visit 13 hospitals, hold 14 exhibits inside those hospitals, and finish up everything in one year.
As the project went on, however, it was obvious that I couldn’t finish in just one year.
“I’ve gained power to live.” “It’s great that we relay our feelings!” “When are you coming next?” These moving words were sent to me, and they made me continue with this project.
The first year ended like this, and when it came time to send back the Happy Dolls to their home hospitals, it suddenly came to me.
“That’s right! I will make a book for ‘producers’ of Happy Dolls to show which places their Happy Dolls travelled around, what kind of people they met, and how they increased Happy Doll friends, etc.” In this way, the project continued to travel to various hospitals throughout Japan. At each venue, their own program and exhibit were held, and then they were sent to the next hospital.
Toward the end of the year, we quickly made a record of this project, and around the Christmas season, we sent out this book to the original hospitals, returning their Happy Dolls at the same time.
In 2010, I flew to New York in order to link Japanese hospitals with children’s hospitals and children who are fighting with cancer in the U.S. Consequently, our network expanded across the border. At the Christmas season that year, the Happy Dolls that were born at many hospitals throughout Japan and those from New York proudly decorated the Wako show window in the Ginza. The Happy Dolls made by the patients who usually silently fight against their diseases in hospitals and other Dolls made by my friends who have already passed away were there in the center of the gorgeous street corner, communicating with people who come and go in front of them.
I was truly moved to see this scene.
In 2011, the fifth year of our project, the Great East Japan Earthquake occurred. Just standing by the disastrous scene, I couldn’t stop my tears. I soon started the Happy Doll project at the evacuation facilities. Since then, responding to changing situations, we held this project at temporary housing, reconstructed apartments, etc. We traveled around three prefectures in four and a half years. Our project is now embedded in each region as a project which cheers up people’s hearts and supports rebirth of communities.
Last year, we again crossed the border and visited South Africa, where our program was on hold due to earthquakes. We visited two children’s hospitals and two children’s facilities and conducted Happy Doll projects with those children who were living with various hardships such as AIDS, poverty, sexual harassment, and domestic violence. These children were eager for chances to make things; they therefore continued to make things with enormous power, as if dry land was absorbing water.
And this year, the Happy Doll project has come into its tenth year. We visited many hospitals throughout Japan and abroad, made Happy Dolls, cried, laughed, were moved, etc. Looking back, it was like an obstacle course, but yet it was repetition of a precious encounter. It was a ten-year dream. Happy Dolls will continue to travel, connecting the places which face life.
2015年1月21日
21 Jan. 2015
Tokyo Metropolitan Children's Medical Center
東京都立小児総合医療センターを皮切りに今年のHappy Dollがスタートしました!「こころ病棟」の子 どもたちが思い思いの作品を制作。写真でご紹介ができずに残念ですが、それぞれ満足のいく仕上がり に、とっても嬉しそうな子どもたちでした。プログラムが進むにつれ、おしゃべりも賑やかに。お母さ んにプレゼントするハート、妹にプレゼントするお揃いのクマなど、子どもたちが心を込めた新たな Happy Dollたちが、今年も仲間に加わりました!
2015年2月6日
院内展覧会 2/6-2/26
6 Feb. 2015
Fukushima Medical University Hospital
Exhibition 2/6-2/26
福島医大の院内学級(須賀川養護学校医大分校)の交流会「親子集会」からお招きを受け、プログラム を実施しました。「心待ちにしていました!」と先生たち。学級に出てこれない子どもたちはお母さん と一緒に病棟のランチルームに集合。Happy Dollが始まった2006年に訪れてから、4回目、5年ぶりの 訪問でしたが、長期入院の子どもたちの成長した姿と再会することも出来ました。「本当に楽しかっ た!」「またやりたい!」そんな嬉しい感想が飛び交ったあっという間のプログラムでした。
2015年3月3日
院内展覧会 3/3-4/3
3 Mar. 2015
Nagano Children's Hospital
Exhibition 3/3-4/3
長野県立こども病院でHappy Doll Projectを開催しました。前半のプログラムには入院中の子ど もたちとたくさんのご家族が参加。「子どものために作っていたけどいつのまにか自分が夢中に なっていた」「手術前の緊張した時間をリラックスして過ごせた」というお母さんたち。プログ ラムをきっかけに初めて病室から出てきてくれたご家族もいた様子で、闘病生活を支えるご家族 がほっと一息、みんなで一緒に笑顔で過ごした時間となりました。
後半は産科病棟でのプログラム。出産を控えたお母さんたち、出産を終えたお母さんたちのこれま でにない交流の機会になったようです。「子どものために何かつくってあげたいと思っていたけど 一歩踏み出せるきっかけになった」というお母さんも。子どもへの思い、愛情がぎゅうぎゅうに詰 まった、お母さんから赤ちゃんへの初めてのハッピードールです。
2015年5月15日
筑波大学附属病院
(茨城県立友部東特別支援学校)
院内展覧会 5/15-6/3
15 May 2015
University of Tsukuba Hospital
Exhibition 5/15-6/3
長期入院の子どもたちのための訪問学級でHappy Doll Projectを開催しました。病気治療のため入院している子ど もたちが、治療を受けながら学べる県内で唯一の特別支援 学校。病状に合わせ、教室と病棟の2ヶ所で同時開催となり ました。先生やお母さんたちと一緒に、楽しそうに作品づ くりに挑戦したこどもたち。辛そうだった表情がパッ!と 明るくなる瞬間は、何ものにも代えがたいひと時でした。
2015年6月18日
弘前大学医学部附属病院
院内展覧会 6/18-7/24
18 Jun. 2015
Hirosaki University Hospita
Exhibition 6/18-7/24
弘前大学医学部附属病院で、青森県内初開催となるHappy Doll Projectを実施しました。午前中はがんサロンを 訪問。患者さん、ご家族、職員さんとかけがえのない時間をご一緒しました。検査を挟みながら、一針一針に願 いを込めて作った四つ葉のクローバー、闘病を続けるお姉さんへのお守り、がんを経験した自分への記念…など 患者さん、ご家族、それぞれの思いがかたちとなりました。プログラムには間に合わず、後から展示を見に来た 患者さんは「参加したかった!」と作品一点一点を愛おしそうに眺めていました。
午後は小児科病棟へ。入院中の子どもたち、お母さん、看護師さん、看護学生さんなど、入れ替わ り立ち代わり総勢40人以上が集まり、賑やかな開催となりました!「子どもたちはもちろん、日々 子どもたちの看病に全力を傾けるお母さんたちのリフレッシュになった」と看護師長さん。メッ セージカードには「元気になったらいろんなところに遊びに行こうね」という願いごとが綴られ、 思いがぎっしり詰まったハッピードールがたくさん誕生しました。 病室訪問では、最初は反応が見られなかった女の子が、次第に目を開け、自分の意志で布を選び、 次々と言葉を発してくれた感動的な場面にも立ち会いました。ハッピードールがもたらした奇跡。 女の子の意志がパッ!と花開き、生きるパワーと見せてくれた瞬間でした。
2015年9月8日
院内展覧会 9/8-11/6
8 Sep. 2015
Morioka Municipal Hospital
Exhibition 9/8-11/6
盛岡市立病院で4年ぶりのHappy Doll Projectを開催しました。精神科でのプログラムには前回も参加してくれ た患者さんの姿も。院内保育園のかわいい子どもたちも遊びに来てくれ、賑やかなプログラムとなりました! 妥協を許さず自分のイメージをかたちにしていく姿は、まさにアーティスト!クリエイティブな作品たちは11 月に院内で開催される精神科患者さんたちの作品展で展示されます。「心がおちついた。ありがとう、又会いた いです」と書かれた患者さんのメッセージに、またの再訪を約束したプログラムでした。
2015年9月15日
院内展覧会 9/15-10/11
15 Sep. 2015
Kyoto University Hospital
Exhibition 9/15-10/11
京都大学医学部附属病院の小児科プレイルームで活動している「にこ にこトマトさん」とのコラボレーションでHappy Doll Projectの開催 しました。子どもたち、お母さん、職員さんからは「楽しかったー!」 の声。プレイルームに出てこれない子どもの病室も訪問しました。 願いを込めたメッセージカードを作品の中に埋め込んだ子。作っている 間は痛みを忘れました。昨日まで楽しみにしていたのに具合が悪くて参 加できなくなってしまった子。お母さんが一生懸命作ったハッピードー ルを見て「かわいい…!」と一言、辛そうな体を起こしました。 ハッピードールは小さなマスコットだけれど、世界でたった一つしかな い誰かの思いそのもの。ハッピードールにまた、たくさんの仲間が誕 生しました。
2015年9月25日
院内展覧会 9/25-10/20
25 Sep. 2015
Shikoku Medical Center for Children and Adults
Exhibition 9/25-10/20
四国こどもとおとなの医療センターの2つの会場でHappy Doll Projectの開催しました!1回目はおとなとこど も、それぞれの病棟からたくさんの患者さんが参加。患者さんと同じ数の職員さんも集まり、賑やかで楽しいひ と時をご一緒にしました。患者さんだけでなく、病院で働く職員さんのリフレッシュにもなれば、という病院の ご希望で実現した今回のプログラム。「普段の病院にはない対話が、患者さん、看護師、保育士、他スタッフの 間に生まれました!」と嬉しい感想をいただきました。
2015年10月16日
院内展覧会 10/16-11/12
16 Oct. 2015
National Hospital Organization
Hokkaido Cancer Center
Exhibition 10/16-11/12
昨年ご好評をいただいた北海道がんセンターで2回目となるHappy Doll Projectを開催しました!患者さんやご 家族がロビーに集まり、それぞれにこだわり溢れるとっても素敵な作品を制作。作品が出来上がっていくにつ れ、皆さんの表情がみるみる晴れやかになり、最後は満面の笑顔を見せて下さいました。
2015年10月28日
院内展覧会 10/28-11/20
28 Oct. 2015
Kutsurogi no Sato
(Special nursing home for the elderly)
Yawaragi no Sato
(Special nursing home for the elderly)
Exhibition 10/28-11/20
宮城県角田市にある特別養護老人ホーム「和らぎの郷」と「寛ぎの郷」でHappy Doll Projectを開催しました。 初年度の2006年に訪れた仙南病院や仙南中央病院とのご縁で、病院との提携施設で迎えた10年目のフィナー レ!午前と午後に分かれ、たくさんの入所者の皆さんが参加してくれました!
ハッピードールプロジェクト2015
協賛:サノフィ株式会社
コスモエネルギーホールディングス株式会社
花王株式会社
ハッピードールプロジェクト2015
Corporate partners:Sanofi K.K.
COSMO ENERGY HOLDINGS Co.,Ltd.
Kao Corporation